前作からもう6年ぶりの新作なんだそうで。
ということは前回の5年半というブランクよりも長いわけなんだけれども、それほど長く感じなかったのは個人的にも世間的にも彼に対する待望論というものが少なかったからではないかと思うんですよね。その間、噂されていたテープワームは結局お蔵入りし、新作にはリチャード・ディヴァインが参加しているという話もデマだったようで、なんだかなぁという気分の中聴いた新作なんですが。
これはちょっとこのアルバムを聴く前の話になるんだけど、彼のオフィシャル・サイトの方でシングルの”THE Hand That Feeds”のPVが公開されてたじゃないですか。それを見て殆んどの人はみょうにアゲアゲなトラックとキャッチーなメロディに面食らったと思うんだけど、基本的なラインはアルバムでも変わりませんね。
で、ここで興味深いのは”THE Perfect Drug”からこの作品に至ったのではなく、一度陰鬱極まりない『THE Fragile』を経由しているということ。つまり彼は”THE Perfect Drug”でポップネスというものを拾い上げ、その後メロディ重視の作風にも取り組みながらも一度座礁してるんですよね。でも、この『WITH TEETH』での改めて「曲」というものに向き合った作風を耳にすると、トレント君って基本的にはオーソドックスなシンガー・ソング・ライターなのかしらって気もする。
で、トレント君みたいな自分を切り売りしているようなアーティストが、こういう憑き物が落ちたような作品を発表すると、「こんなものを彼には求めていない」なんて事を言い出す人が出てくるわけなんだけれども、そういう物言いって人間よりも音楽を大事にしているようであんまり好きじゃないんですよ。でも一方でそのような物言いを切り捨てられないようなところもありまして、というのはこういう場合に出てくる作品の殆んどが退屈な物だからなんです。
ではこのアルバムはどうなのかというと、まぁイマイチですね。今作での変化ってポップになったのと共に、トラックの音数が減ってシンプルになった事があると思うんですが、前作『THE Fragile』が、ヴォーカル、トラック共に凄まじい緊張感うを放っていたのに比べると、今作はどうにも中途半端に思えるんですよね。前作は陰鬱な雰囲気もさることながら、実験的な美しさにと富んだサウンドも素晴らしかったわけで。でも今作では進化らしい進化も特に見られず、エレクトロニカさえ過去の話に思える今の耳には刺激に乏しいのですよ。変拍子刻むドラムと溜めまくった所で鳴るベースが絡むタイトル曲なんかは面白いと思うけど、でもミニストリーの”The Fall”に似てるような感じもして、そうするとあの曲は何年前の曲だなんて考え出すとちょっとね。だったら先のシングル曲のようなポップなものでアルバム全部埋め尽くしたほうが面白かったと思うんだけれども、勿論そんな事はなく基本は暗黒系だし。
まぁ、悪いアルバムではないと思うけれどやはりトレント君には更なる高みを望んでしまいますね。でもこの手の人は大抵揺り戻しがあると思うんだけれど、次作はまた6年後でしょうか。
- 曲名リスト
-
- All The Love In The World
- You Know What You Are?
- Collector
- Hand That Feeds
- Love Is Not Enough
- Every Day Is Exactly The Same
- With Teeth
- Only
- Getting Smaller
- Sunspots
- Line Begins To Blur
- Beside You In Time
- Right Where It Belongs
by G-Tools , 2007/05/28
ooterがサウンドを話された。
こんばんわ。TBありがとうございます。
私も前作が大好きでかなりヤラれてたので今回は、かなり聴きやすく感じました。でも結構好きです。本当、また次はどんな作品が・・と楽しみなのですがずいぶん前作から時間が経ったのを考えると。
またおじゃましますね。
当方からもTBさせてもらいました~。
検索で目にとまったのでコメントを・・・どうせ管理人は見てないだろうw
> 前作『THE Fragile』が、ヴォーカル、トラック共に凄まじい緊張感うを放っていたのに
|これは同感。
> だったら先のシングル曲のようなポップなものでアルバム全部埋め尽くしたほうが面白かったと思うんだけれども
|確かにTHTFは”ポップ”だよね、シングル曲だしさ。
|だけど、”ポップ”な曲ってのはそうなかなかできないよ。日本レベルでのポップソングなら話は別なんだけどねw
“ポップ”ってのはカッコイイ部分があってのポップだす。
いやいや、ちゃんと見てますよ。
何せ1年半も前の記事なので正確な意図は思い出せないんですけど、多分このポップ云々っていう箇所は、特にトレント君にポップになってほしいというわけではなくて、ポップにも実験にもどっちつかずで中途半端だと言いたかったんじゃないかと思います。
まぁ何にしても文章力のない私が悪いんですけどね。
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TITLE: Nine Inch Nails – With Teeth (Interscope Records:B000455302)
BLOG NAME: Tokyo Experiment
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久しぶりにTrent ReznorことNINのアルバムが出ました。NINはロックバンドの中でも、特にお気に入りのバンドです。ロックと言うかインダストリアルですね。硬質でメタリックな機械ビートが特徴で、かなり強烈な音を出していました。特にインダストリアルの金字塔である「The Downward Spiral」は、自虐的でどこまでも身を滅ぼしつつ暴走し周りにある物全てを破壊する、そんな欲求を音楽に昇華させた様な作品でした。それなのにある一瞬では思いもしない程メランコリーで儚く美しい瞬間が訪れたり、全体を通して破壊力のある音が出ているにもかかわらずかなりPOPなメロディーで構成されていたり、最初聴いた時は相当なインパクトがありました。で、この5年ぶり位の最新アルバムですが以前よりTrent Reznorの悩みも減ったのでしょうか?それ程重苦しくなくて、普通のロックになっちゃってました…。相変わらずキャッチーなメロディーだしかなりノイジーで良い感じなんですが、う~ん、これがNINの作品でなかったら絶賛出来るんでしょうけど。NINの作品として見ると、凡作かなぁ。全てをなぎ倒すような圧倒的なまでの暴力性や、絶望の淵に居るようなTrent Reznorと言うのが稀少ですね。非常に重苦しい前作の「The Fragile」より聴きやすくはなっていると思いますが。
NINの作品を初めて買うなら「The Downward Spiral[Deluxe Edition]」がお勧めです。
Check \"Nine Inch Nails\"
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TITLE: 『N.I.N/With Teeth』『Teenage Fanclub/Man-Made』
BLOG NAME: accident waiting to happen – love
内容的には対照的な2つの新譜。でもどっちもよかった??!!!
★Nine Inch Nails / With Teeth★
前作The Fragileは私的にはかなりのインパクトでヘヴィーでコアでありながらも交響曲を思わせるような優雅でダイナミックな部分も多く完全に圧倒されつつもヘビロテで…
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TITLE: NIN,GarageBandファイルを配布
BLOG NAME: ねこにこばん
5月3日発売の新アルバムが待ち遠しいnine inch nailsのトレント・レズナーが,新曲「The Hand that Feeds」のGargeBand 2用ファイルを配布しています.日本では未発売.iTMSからはダウンロード可能.早く日本でもiTMS始まりませんかね.