私が今まで聴いたことのあるメタルのバンドの中で、もっとも偉大なバンドだと思うのは METALLICA なんですが、その理由は単純で、『Kill ‘Em All』というアルバムを作ったから。では『Kill ‘Em All』の何をそんなに評価しているのかというと、あの殺気にも近い緊張感であったり勢いなんですね。
そういった意味では前作の『St. Anger』って自分の中では非常に評価の高い作品なんだけど、その後のライヴでは昔の曲のオンパレード、挙句の果てには『Master of Puppets』の完全再現(過去記事)なんかしたりして、『St. Anger』でせっかく掴んだものを自ら手放しているような印象さえ抱いたものでした。
そして前作から5年ぶりとなる『DEATH MAGNETIC』は予想通りの原点回帰作。なんでもプロデューサーの Rick Rubin の提案だったようで、「変化を求めるあまり、自分の得意なものを避ける必要はない」っていうのはそのとおりだと思うんだけど、じゃぁ今の自分たちに昔みたいなことが出来るかっていると、それはまた全然別問題なわけで、精神的にも年齢的にも、また環境的にも昔の METALLICA になど戻れるはずがない。そこを『LOAD』『RELORD』で学んだ現代的な方法論と、独特すぎる音作りで補完してみせたのが『St. Anger』だったのに、それを捨てて体裁だけ繕ってみても、そんな作品は退屈なだけ。
個人的には、『LOAD』『RELORD』で垣間見せた、 James Hetfield の歌ものシンガーとしての魅力に焦点を当てた作品を作るのが、バンドの方向性としては一番自然なように思えるんだけど、それはそれで予定調和すぎてつまらないのかもしれないし、かといって本作はメタルとしては角が立ったところがなさ過ぎる。
まぁ私は1枚目が最高、評価の高い2枚目と3枚目はその1枚目の残り香で何とか体裁を保っただけ、と考えているかなり極端な人間なんで、普通に METALLICA 聴いてる人の実感とかなりかけ離れているのは間違いないんだろうけど、それでもこの作品が絶賛でもって向かえらるのって、それこそ予定調和の極みのように思えるのだが。