最近人に「どんなの聴いてるの?」と聞かれると「ルーマニアのミニマル」と答える事が多いのですが、大抵なんじゃそりゃ、って顔をされるので、いくつか盤紹介してみたいと思います。
とはいっても私も特に詳しいというわけではなくて、なんとなく意識しだしたのが Petre Inspirescu の『Intr-o seara organica…』(過去記事)を聴いてから、段々と盛り上がってきているのを感じて、ちゃんと意識しだしたのは今年でしょうか。
なので実態とかは全然つかめていないのですが、とりあえずシーンの中心としてよく語られるのが Rhadoo と、先に名前が出た Petre Inspirescu 。この二人の共通点というと、 Cadenza からのリリースというのがありますが、ルーマニアン・ミニマルも大別すれば Cadenza 系のパーカッシブなものがほとんど。しかしルーマニアのものは対して展開のない地味なものが多く、また1曲1曲が長い(上の二人も Cadenza からのは片面1曲のダブルパックだもんねぇ)。
なのでそういった意味では聴く人を選ぶ感じはあるんだけど、さらに厄介なのはレコードのみのリリースというのが非常に多く、また人気レーベルになると、日本に入ってくる前に売り切れちゃうということ(3、400枚くらいは刷っているみたいだから、極端にプレス数が少ないわけはないんだけど・・・)。
とはいってもデジタル・リリースが全くないわけでもないので、今回は手に入りやすいデジタルでも出ている作品を(アナログでも出てるけど)。
ということで前置きが長くなりましたが、オーストリアのレーベル Do Easy の3周年記念コンピ。
なんでルーマニアの話してたのに、オーストリアのレーベルなんだ、って感じですが、参加してる3人中2人がルーマニアの人なので。
まず1曲目の Matthias Meyer は Liebe*Detail などからもリリースしていて、過去にこのレーベルからもリリースしているドイツ出身の人。曲の方はシンプルなリズムにうっすらとした上モノが乗るミニマル・ハウスで、悪くはないんだけど、ちょっと個性が足らんかな。けっこう前面に出ているベース・ラインがもうちょっと面白いと、印象も違うと思うんだけど。
2曲目はルーマニア出身の Matei Tulbure と Traian Chereches による2人組み TC Studio 。
この人たちの SoundCloud の曲を聴くと実験的なものが多いんだけど、今作も負けず劣らず不思議な曲。ボツボツと鳴るキックと引きずるようなベース、うっすらと不安を煽るような上モノに鐘の音と、とてもクラブ向けとは思えない暗い曲ながら、この独特の雰囲気は癖になる。とは書きつつも、ルーマニアン・ミニマルっていう感じは希薄なんだけど。
っつうことで、自分の中のルーマニアン・ミニマルの印象に一番近いのが、次の Vid こと Sorin Rastoaca の “Simfonic 03” 。
前半部分は乾いたリズムと動きのあるベースラインの素っ気ないミニマル・ハウスながら、中盤から入ってくる淡い色彩のシンセがとにかく美しい。しかもそのシンセも、押し出しの強いものではなく、触れれば壊れてしまいそうな繊細さを持ちながら、きちんと曲に明確な色を与えていて、ここら辺の濃淡のバランスの妙が、他のルーマニアン・ミニマルにも共通していて、そこに私は魅力を感じる。
地味にハイハットで緩急付けているのもいい。
なんか最後の曲以外微妙な書き方になってしまいましたが、とりあえずルーマニアン・ミニマルの入り口として、どうでしょう。