思えば現在ミニマルと呼ばれているサウンドが、まだミニマルと呼ばれていなかった頃、つまりは(少なくともここ日本では)クリック・ハウスという呼称が一般的だったときというのは、 Basic Channel や Studio 1 を源流としたミニマリズムという見方よりも、エレクトロニカから派生したサウンドという印象が強かったように思うんだけど、その印象を決定付けていた Mille Plateaux が倒産してしまったせいなのか、以降こういった動きに注目が集まる事は少なかったように思います。
しかしミニマルが停滞の時期を迎え、周辺ジャンルとの壁がゆっくりと溶解している現在、エレクトロニカの代表レーベルである raster-noton から発表された素晴らしいシングルが本作。
重いキックが刻む変則的な四つ打ちのリズムを軸としながら、後半にいくにしたがって、うねりながら空間を埋め尽くしていくノイズが、とんでもない高揚感を生み出している。普段ミニマルを聴いている身からすると、音数、展開共にかなり多いんだけど、結局はすべてノイズに収束していくので、それほど違和感はないし、これほど素直にノイズとダンス・グルーヴを結びつけたものもあまり聴いた事がない(普段エレクトロニカ聴いてる人はどうか分かりませんが)。
参加したリミキサーも、お得意の荒々しい四つ打ちに置き換えた sleeparchive 、ぶつ切りのエレクトリック・ファンクに仕立てた alva noto 、インダストリアルなミニマルの dr walker と、いずれも素晴らしい仕事振りで文句なし。
12インチでは久々に大きな手ごたえを感じた作品です。