自分の中での日本のヒップ・ホップの盛り上がりは、韻踏合組合に始まり韻踏合組合(から MINT と NOTABLE MC の脱退した事)に終わるといった感じだったんですが、それ以外にも、あの時期は托鉢や土俵もあって良かったなぁ、なんて思うわけでして。なんて書いても分からない人にはまったく分からないかと思いますが、つまりは今のようなヒップ・ホップど真ん中の空気よりは、もっと雑多な感じが好きということです。
なのでヒップ・ホップに軸足を置きながらも、独自のセンスでエレクトロニック・ミュージックやメタルを取り入れ、さらには圧倒的な語彙と比喩で自らの心情を語る、素晴らしき3人のMCがいる 8th Wonder には当然のように大きな期待をしてしまいます。
でも前作から4年ぶりとなるこのシングルは、ん~、ぶっちゃけ微妙。
曲調的には前作の “Enigma part.2 EP” に近いもので、ゆったりとしたエレクトリック・ビートと、サビの部分で重厚なギターがなるのも同じ。しかし巧みな比喩を用いて、自らの葛藤をひたすら紙とペンにぶつけているようだった歌詞は、昔に比べるとずいぶんと直接的なものになり、世間に溢れている標語じみた応援歌と紙一重に思える部分も少なくない。さらにはラップ・パートが終わって後半、延々と続くギター・ソロが今どきないくらい感情的なもので(しかもツイン・リードだよ?)、必要以上にドラマ性を煽っているのも、ベタベタとした応援歌的な印象を強くする。
まぁそれでも独自性はきちんと保たれているし、完成度もけっして低いわけではない。でも前作を2000年代屈指の名盤だと思っている身からすると、満足できないのも事実なわけでして、今年中には出るであろうファースト・アルバムに期待したいところです。