現時点において、ミニマルの中心地がベルリンだというのはまず間違いのないところなのだけれど、個人的にはベルリンの磁場からある程度はなれた動きをしているカナダのアーティストに惹かれてしまいます。
例えば Akufen こと marc leclair は、昨年のアルバム以降(過去記事)、以前のカット・アップ・ファンクからは想像もつかないような静かな世界を描いているし、Mathew Jonson はますますサイケデリックな色合いを増し、Deadbeat は Pole との関係性を強めますますダブへと傾倒しています。
そして自身のレーベル Cynosure を主催する mike shannon のこのアルバムも、同様に最近のミニマルからは距離を置いた内容になってます。
Force Inc. からの前作『Slight of Hand』はかなりフロアを意識したようなクリック・テクノだったのだけれど、今作はレーベルを意識してかミニマル・ダブっぽい意匠を強くしています。しかし単純にレーベル色に染まったとかいうわけではなく、同時にジャズの色も非常に強く、しかも歌モノの曲が多く配されているというなかなか独特な世界を作り出しています。特に4曲でヴォーカルをとる Anais という女性のソウルフルな歌唱が白眉なのだけれど、それを包み込むような音作りもまた素晴らしい。しかも終始穏やかな世界を描きながらも緊張感が損なわれる事はなく、そのストーリー性のある流れと相まって、何かを暗示するようなラスト2曲は特に印象的です。
「終わらない物語」の「最後の日」とは?
これからも聴きこんで読み解きたい気分にさせるアルバムです。
Possible Conclusions to Stories That Never End
Mike Shannon
曲名リスト
1. Come to You
2. Sudden Moves
3. Sweet Lies
4. Blind
5. Miyako
6. Taken Only Road
7. I’ll Pay My Rent on the Daytime Nocturnal
8. Underwater Fish Market
9. Bathing in Microwaves
10. Last One Terrified
11. News
12. Remembrance
13. Tears
14. Last Days