以前雑誌が情報の中心だった頃って、年間ベストが出るのって1月中旬とかが多かったと思うんだけど、いつから12月中にはだいたい出揃うようになったんですかね。やはりネットが中心になって情報のスピード感が増したせいでしょうか。なので私が記事書くのこの時期になったのは、筆が遅いからではなく、基本に立ち返ったからなのですよ、という言い訳から始まる2012年の年間ベストです。
年間ベスト自体は ecrn award に昨年投稿済みなんだけど、これはその拡充版という感じ。例によってアルバム、シングルごっちゃです。
あと宇多田ヒカルの『桜流し』も入れようかと思ったんだけど、1曲しか収録されてないのでさすがにやめた。だったらこの前のベスト・ソングの方に入れればよかったんだろうけど後の祭り。
30. Jhameel / Waves
アメリカのシンガーのミニ・アルバム。今作は “White Lie” がとにかくツボで、生活のリズムに溶け込むような軽やかさと柔らかなメロディが心地よくてよく聴いた。また Jhameel 本人が奇妙ながら魅力的なダンスを披露するビデオも良かった(今は削除されちゃってるけど)。まぁその他の曲に関しては、切なげなファルセットを聴かせる “Waves” 以外はイマイチなんだけど、自分の2012年の中でも印象的な作品だったのは間違いない。なお他の作品含め彼のサイトで落とせる。
29. MiChi / THERAPY
2008年デビューの女性シンガーの2枚目のアルバム。これの前に出たシングル(過去記事)が良かったのでけっこう期待してたんだけど、彼女の心情的なまっすぐさと伸びやかなメロディが合致した会心作でした。わりと素直に作った感じなのも良かった。
28. Iman Omari / Energy (関連記事)
これは記事に書いた通りなんだけど、ゆるい部分と緊張感のある部分を行き来する、彼のヴォーカルがまず魅力的だったし、歌だけに頼らないどっしりとしたトラックも素晴らしかった。 “Worth It” は名曲。この後に出た Moruf との共作はイマイチだったけど。
27. Sendai / Geotope
Peter Van Hoesen と Yves De Mey によるユニットの初アルバム。2011年に出た Yves De Mey のアルバムはちょっと難解な感じがしたんだけど、今作はノイズやドローンを取り込んだ実験的な作風ながら、肉体的なビートもしっかりあって聴きやすかった。
26. ANDY STOTT / LUXURY PROBLEMS
正直買ってそれほど日が経っていないので、あまり回数聴けてないんだけど、ドロドロダブサウンドはそのままに、前作の “New Ground” を発展させたような洗練された歌ものに仕上げたのは面白かった。回数聴いてたらもっと上だったかもしれない。
25. Lana Del Rey / Born To Die
アルバム単体だとベストに選ぶほどか、っていうと微妙なんだけど、アルバム発売以降も手を変え品を変え話題を提供したりとハイプとしての立ち位置が分かってる感じで面白かったし、挙句の果てに Moodymann まで引っ張ってきたんだから見事というしかない。
24. Knx. / Buttrskotch (関連記事)
23. Supreme Cuts & Haleek Maul / Chrome Lips
Haleek Maul はソロで出したミックステープも良くて下半期ベストに入れたんですが(関連記事)、 Supreme Cuts と組んだ今作はさらに良かった。抑揚が激しいのにどこか冷めた印象の Haleek Maul のラップといい、Supreme Cuts の隙間を活かしながらもどっしりとしたトラックといい、どこか淀んだアンダーグラウンド的な空気といい素晴らしかった。
22. KNUX a.k.a Mr.Austin / System CRUNK
21. Ango / Serpentine
2012年のアンビエント R&B を代表する作品、って事になるんでしょうが、 Kuedo や Jacques Greene といったクラブ系のトラック・メイカーが参加している事もあり、全体は柔らかながら、しっかりとグルーヴもあり完成度が高い。こういうシンガーとトラック・メイカーの結びつきってイギリスならでは、って感じはする。
20. LowPass / Interludes from “Where Are You Going?”
19. MP / Trei Locuri EP
ルーマニアのプロデューサー MP のシングル。乾いたパーカッションを中心に組み立てられたトラックは、今にも崩れ落ちてしまいそうな繊細さをもちながらも、淡々とダンス・グルーヴを積み上げていて素晴らしい作品。この人はこれ以降何枚かシングルを出しているが外れが全くない。
18. soakubeats / Never Pay 4 Music
正直ミックステープ聴いてる段階では彼のトラックにラップが乗ることってあまり想像できなかったんだけど、蓋を開けてみればラップのグルーヴとトラックが合致した見事な作品になっている。参加ラッパーが多い分トラックに幅があるのも良い。
17. GOTH-TRAD / New Epoch
今年はあまりダブステップを聴けなかった感じはあるんだけど、この作品の素晴らしさは別格でしょう。ダブステップでしかありえないような太いグルーヴに貫かれながらも、未来を見据え進化したトラック群は、クラブ、リスニング両方いける高い完成度だった。
16. Gerry Read / Jummy
若干二十歳のプロデューサーのファースト・アルバム。ジャズ的な乾いた音が中心ながら、それが洗練に向かわずに、ベース・シーン出身らいい荒々しい低音と共に暴力的なまでの肉体性を獲得していて非常に面白い。若い分、ここからどう成長していくのかも楽しみ。
15. Sutekh Hexen / Larvae
ノイズやアンビエント、ドローンなどを取り入れる事により、ブラック・メタルは今最も刺激的なジャンルの一つになったと思ってるんだけど、それを見事なまでに体現しているのが今作。ノンビートながらも緊張感が途絶えないアンビエントパートと、一転ノイズとブラストで押しまくる部分との、静と動の対比が素晴らしい。
14. PEPE BRADOCK / IMBROGLIOS PART
R&S からアルバム出すっていう話は一体どうしたの、って感じの Pepe Bradock さんの連絡シングル。正直この話が出たとき、果たしてちゃんと4枚全部出るのか不安だったのだが、2012年に2枚、そして今年3枚目もすでに出ているので問題なさそう。中身はこの人らしい変態的ながらももの悲しさ漂う奇形ハウス。あとは4枚まとめてアルバム化とかしてくれるといいんだけど。
Read full review of Imbroglios Part 1 – Pepe Bradock on Boomkat.com ©
13. JMSN / †Priscilla†
今作は出たばかりのときに聴きすぎたせいもあり、年の後半はあまり聴く気になれなかったんだけど、アンビエント R&B の傑作として入れないわけにはいかないでしょう。ちなみに最初有料だったんだけど、今はフリーで公開されてる。
ダウンロード
ダウンロード
12. CRZKNY / REAL SHIT EP
もう間もなく初のフル・アルバムが発売される広島のトラック・メイカーの EP 。最初聴いたときは、彼にしては随分ストレートなジュークを出してきたな、と思ったんだけど、彼の特徴でもある音圧の高い低音はそのままで、かえって CRZKNY の懐の深さを感じさせてくれた。おまけとして付いてくる、様々な大ネタをぶった切ったライブ音源も楽しい。
11. NORIKIYO & OJIBAH / OJIKIYO X NORIBAH
多分歯に衣着せぬ言葉が並ぶ前半が注目された作品ではあるのだろうけれど、ノリキヨの一連のシングルの流れを汲むようなポップな後半も面白かったし、またそういった相反するような要素を同居させているからこそ、二人のラッパーとしての巧さも目立っていた。
10. VLAD CAIA / PROJECTIONS EP
これもルーマニア系。変則的な四つ打ちの上でストリングスやブラスが不協和音を鳴らすという、非常にアブストラクトなトラックではあるのだけれど、ジャズやクラシックを飲み込んだような音楽的な豊かさも感じられ、ルーマニア系にのめり込むきっかけになった作品。田中フミヤがリミックスしてるのもポイント高い。
Projections from Vlad Caia on Vimeo.
09. TOKIO / 17
少し前の独自の歌謡路線を支持していた人間からすると、ちょっと出すタイミングを逸した感もあるアルバムではあるんだけど、以前のようなロック路線と歌謡路線を程よく両立させた充実の内容になっている。シングル以外の曲のほとんどを、メンバーが作詞作曲編曲しているのも、作品に新鮮な風を呼び込んでいるように思う。
08. Sango X ZandSHE / ☯
透き通った高音と憂いを含んだ低音を聴かせるZandSHE のヴォーカルと、それを切なさと柔らかさでゆっくりと包んでいく Sango のトラックが素晴らしい本作は、充実作の多かった2012年の R&B の中でも一番聴いた。まぁアルバム名で並べているうちの iTunes では上から3番目に表示されるので、目に付きやすかった、っていうのは正直あるんだけど(笑)。
07. DFRNT / Actaeon EP (関連記事)
2012年はアンビエント R&B をよく聴いたんだけど、そんな人間からすると DFRNT の透明感のあるシンセとテクノ的な質感のリズムはしっくりきたし、ジューク的な感覚さえ内容しているんだから、そりゃぁ好きにならないわけがない。この後出たフル・アルバムも、予想以上にテクノに寄った内容ながら良かった。
06. Black Autumn / Ghosts at Our Windows
シューゲイザーを取り入れたブラック・メタル、所謂ブラックゲイズというスタイルのバンド、というと時代の最先端いってそうな感じがするが、今作はギターとヴぉカールの泣きのメロディで聴かせる、むしろ古典的なもの。しかしギターはノイズまみれ、ヴォーカルにいたっては地獄からの声のような咆哮なのだが、それが逆にメロディの憂いを倍増させていて、とにかく泣ける。今年出るというミニ・アルバムも楽しみ。ちなみに私が買ったときはテープでしか買えなかったんだけど、今はフリーで落とせる。
05. predia / Invitation
メンバーが全員18歳以上だという大人な感じのアイドル・グループのファースト・アルバム。今作に関してはとにかく曲が良い、っていうのはあるんだけど、それ以外にもアイドルはハレとケの対比が大事だと思ってる人間からすると、キャバ嬢っぽいヴィジュアルにあった派手な曲と、大人の女性らしい倦怠感(失礼)が同居した本作は全てがツボだった。
04. RICARDO VILLALOBOS / DEPENDENT AND HAPPY
ここ最近の Villalobos の実験路線って、自分には難解過ぎてよく分からなかったんだけど、今作は彼らしい分かりやすいネタを使った異物感と、それを支えるしっかりとしたダンス・グルーヴがあり、今まで聴いてきた彼の作品の中でも指折りの傑作になっている。曲がミックスされた CD とは別に、アナログは5枚組み、さらに今年になってから未発表曲も出して6枚組みにするという部分も、マニア心をくすぐられました。
03. Burial / Truant
この人は2011年の『Street Halo』も傑作だったけど、今作も DJ ミックスでも聴いているかのような多様な曲展開を聴かせながらも、全編悲しみで染め上げられた音はまさしく Burial といったもので、この人が代替不能な才能である事を改めさせて感じさせてくれた。あとはそろそろアルバム作ってほしい。
Read full review of Truant / Rough Sleeper – BURIAL on Boomkat.com ©
02. 嵐 / Popcorn
どうもイマイチ感の強かったシングルに比べると、アルバムに関してはしっかりと充実した作品を作っていたここ数年の嵐ではあるのだけれど、それにしてもここにきて諸手を上げて絶賛したくなるような作品を届けてくれた事は本当にうれしい。
タイトル通りのパーティーチューン “Welcome to our party” で始まる勢いのある前半から、彼らの成長が聴き取れるスケールの大きな歌モノが並ぶ後半、という流れもいいし、それでいて全編弾けるような楽しさに溢れているのも良い。『Popcorn』というタイトルを体現したような作品だ。
タイトル通りのパーティーチューン “Welcome to our party” で始まる勢いのある前半から、彼らの成長が聴き取れるスケールの大きな歌モノが並ぶ後半、という流れもいいし、それでいて全編弾けるような楽しさに溢れているのも良い。『Popcorn』というタイトルを体現したような作品だ。
01. KAT-TUN / CHAIN
KAT-TUN にクールなかっこよさを求めている人間からすると、今作が理想的な進化か、といわれると違うんだけど、それでも年齢に見合った憂いが刻まれた今作は非常に納得感のあるものだったし、流れの巧みさもあり違和感なく作品の世界観にはまる事ができた。実際今の5人の声にはこの作風は非常に合っていたしね。 “RUN FOR YOU” 以降の歌唱力の向上も活きていたように思います。