Raster-Noton の作品をよく聴いた2011年に比べると、あんまりピンとくるのがなくて2012年はそれほど聴かなかったんですが、そんな中印象に残っているのが本作。
Senking こと Jens Massel さんが2012年5月に発表したシングル。
Raster-Noton って強烈なエレクトリック・ビートの作品はいくつも出しているけど、ダブステップに関しては特に影響を感じることがなかったんだけど(もちろん全部聴いてるわけじゃないけど)、今作の “The Dance Hall Walk” は明らかにダブステップのスタイルを踏襲したものになっている。
しかしただのダブステップではもちろんなく、地面を這いずり回るようなベースラインと変則的なキックやスネアの絡みのみで聴かせる前半は、ほとんどドローンのよう。そこから歌とも語りともつかない男声が入ってくる中盤以降、音数も増え、曲の輪郭がはっきりとしていくにしたがって、徐々にではあるが曲が熱を帯びてくるのが分かって面白い。
もう1曲の “Closing Eyes” は、ほとんどスネアが入ってくる事はなく、延々とベースが鳴っているような、 “The Dance Hall Walk” よりさらにドローンっぽい曲にはなっているものの、ベース・ミュージック的な低音のグルーヴもしっかりと感じられ、ただ頭でっかちなだけではない、身体性を伴った曲になっていて、こちらも聴き応えがある。