http://www.facebook.com/pages/Dolly/232895513465570
以前はほぼ同義だと思われていたダブステップとグライムというジャンルが、気がつけばすっかり別物となったのと同じように、いつの間にか本流のダブステップとはあまり交わる事がなくなった、というか今ではテクノの亜流といった感じの、テクノの影響を受けたダブステップなんですが(今ここら辺なんていうんだろうね。「ポスト・ダブステップ」っていう言葉もあまり聞かなくなったし)、そんなダブステップのテクノ化への先鞭をつけた Martyn こと Martijn Deykers さんが2013年3月に出したシングル。
リリースは Panorama Bar のレジデントでもある Steffi のレーベル Dolly の、サブレーベルである Dolly Dubs から。
キラキラとした音色の上モノに続き、軽快なドラムにパーカッション、ハイハットが絡まり、最後にベースが鳴ることでグルーヴが形作られる “Oceania” は、 Steffi のレーベルから、という前情報を考えると、拍子抜けするほどブレイクビーツ的なトラック。細かく鳴らされるシンセやハイハット、ドラムが作り出すリズムはかなり複雑なものの、淡々としたベースの作り出すグルーヴはゆったりとしているという、ドラムンベースにも通ずる2面性があり面白い。また一方で後半に入ってくるデトロイト・テクノ的な浮遊感のあるシンセは最近の Martyn らしいもので、様々な要素がさらりと纏め上げる手腕には感嘆する一方、出来上がったものがブロークンビーツに非常に近いところに、時代が一巡りした部分を強く感じる。
それに比べると、残りの “Newspeak” と “What is Room 101” は、良くも悪くも普通のテック・ハウス。両曲とも跳ねたサブベースが主張するとことかは、さすがベース・シーン出身、という感じもするが、全体を包み込むようなシンセが印象的な “What is Room 101” は、逆に今ではあまり耳にしないくらい正統派なテクノ(ちょっと Fabrice Lig っぽいかな)。
つまり今作は全体的に温故知新的な色合いが強い作品になっていて、それを今までに聴いてきた音だ、と切り捨てるのは簡単なんだけど、最近のハード・ミニマル回帰とあわせ、ここら辺の正統派テクノ的な佇まいがどう影響していくのか、というのは興味深い。
まぁ書き方かえると、本流のダブステップとの隔絶はますます深まるのかな、とは思うけど。