果たして、こんな妙ちきりんなダンス・ミュージックとジャニーズばかりを紹介しているブログを見てくれている人の中で、「SNOOZER」なんか読んでいる人が一体何人いるのかは分からないけれど、今月号での Autechre の Sean Booth によるダブ・ステップ評がなかなか興味深い。要約すると「UKブラックのダンス・ミュージックは、最初期において必ず文化的参照点のある歌詞があるが、ある時点でプロデューサによってその文化的参照点が切り落とされる」というもので、これは確かにいわれると、なかなか説得力のある考察のように思える。実際ジャングルからドラムンベース、グライムからダブ・ステップってそういう流れだもんなぁ。まぁ文化的参照点を切り落とす目的が「国外輸出できるようにするため」というのはどうかと思うんだけど、メッセージ性の強いグライムと違って、現在のダブ・ステップは良くも悪くも機能的なダンス・ミュージックなのは事実。しかしそれと音楽的な面白さというのはまた別の話で、私のように暗く沈みこむようなダンス・ミュージックが好きなものからすると、今ダブ・ステップというのは唯一の光のようにも思える(この言い方からすると唯一の闇か?)。そしてこのブログでも何回か書いているように、最も興味があるのが、今後ダブ・ステップとミニマルがどのように交わっていくのか。それは例えば Surgeon が以前からDJセットにダブ・ステップを取り込んでいたり、私の知らない地下では他の動きがあったのかもしれないけど、それが分かりやすく現れたのは、やはり昨年春に出た Skream による Marc Ashken のリミックスではないでしょうか。このシングルは当時結構話題になったんだけど、それ以降ダブ・ステップとミニマルの交配に関しては、他にもいろいろ出たものの、特にこれといって話題になるようなのがなかったんだけど、その後注目されて以降、現在ダブ・ステップとミニマルの境界線上のレーベルとして真っ先に名前が挙がるのが、おそらくこの Skull Disco ではないでしょうか。
とまぁ、思いもかけず長い前フリになってしまったわけですが、私がこのレーベルの名前を聴いたのは、レーベルの6番が出たときで、 Villalobos もこのレーベルの音源をプレイしている、なんていう紹介文を見て、へぇ~なんて思っていたら、あれよあれよという間にその Villalobos によるリミックス盤が出て、そこからさらに間を置かずに出たのが本作。輸入版買ったんで詳しくは知らないんだけど、多分今までのレーベル音源に未発表曲を足した編集盤。
音の方は、このアルバムのジャケットであったり、またはレーベル名から想像できるまんまで、パーカッションと重いベースを中心とした呪術的なトラックは、所謂一般的なダブ・ステップのスタイルとはちょっと違うように思える。しかしダブ・ステップを一度解体して再構築してみせたような曲郡は実験性が高く、UKダブの流れから見ても、UKブレーク・ビーツの流れからも見ても非常にユニーク。あと多分あっち方面での実用性も高そう(なんか凄いドゥーミーなんだよね)。
そして今作の中で一番話題になった曲は、何だかんだで Villalobos による Shackleton のリミックス。先の12インチでは表裏に分けられていたけれど、今作にはめでたく18分フルで収録。これが原曲を骨抜きのスカスカにしたようなミニマルで、しかし何故か曲の持つグルーヴはしっかりとキープされているという不思議なリミックスで、『Fizheuer Zieheuer』を想起させる。
この後レーベルは特に動きがなかったんだけど、 Shackleton 方は Crosstown Rebels からリリースしたり、さらには Simian Mobile Disco のリミックスまでやったりなんかして、その存在感をますます大きくしております。
そして先日紹介したシングルがもうすぐ出るっていう流れになるわけですが、これで先日の記事の補完ができたでしょうかね。久しぶりに書くのに時間がかかったので疲れたよ・・・。