現在中国在住だという Bvdub こと Brock Van Wey が2013年1月に発表したアルバム。
この人の名前自体は2、3年前から知っていたものの、作品数が多過ぎるせいか、逆に聴くタイミングが合わなくて私が聴くのは今作が初。聴く前は Bvdub に関してはミニマル・ダブを作る人、という印象を持っていて(名前に「dub」も入っているし)、実際今作での音作りはミニマル・ダブ的なものではあるものの、ある意味ミニマル・ダブとは対極にあるような作品になっている。
というのも、冒頭の “Another Love” からして、雄大な響きのシンセと女性ヴォーカルが作り出す音世界は、劇的かつ感情的なもの。それはその他の曲に関しても同様で、またほとんどの曲で歌い上げるようなヴォーカルが導入されていたりと、ミニマル・ダブの展開のなさや冷たさとは一線を画している。
ただメロディやヴォーカルの劇的な部分と、アンビエント要素の強いトラックが溶け合うことで、曲が大仰になるのを見事に回避しているし、それでいて非常に洗練された形でヴォーカルを主軸においているところなど、歌ものとしての新鮮さも感じる。
アンビエント R&B やチルウェイブなどの人気により、以前よりもエレクトリックな曲が聴かれるようになった気がするんだけど、そういった人に対するテクノの入り口としても良いのではないだろうか。