私が Loco Dice の名前を知ったのは、おそらく多くの人がそうだったように、 Cocoon から出た Villalobos とのミックスCD『Green & Blue』でなんですが、そのせいか Loco Dice は Cocoon を中心に活動しているような印象があります。
しかし実際はそんな事はなく、 Cocoon 以外にも Ovum や m_nus 、 Cadenza など、一見すると節操がないほど色んなレーベル体作品を出していて、その中の何枚かは聴いてみたものの、どうもイマイチ Loco Dice の個性というものがつかめずにいます。
そしてそれは、自身のレーベルから出たこのファースト・アルバムでも変わらない。
ゆったりとした四つ打ちのキックの中から、徐々に何かが立ち上ってくるようなエレクトロニクスが印象的な1曲目の “Breakfast At Nina’s” から、暗黒ミニマルの中で悲しみと甘さを湛えたメロディがのる “Black Truffles In The Snow” 、ちょっとシカゴっぽい男性の声と荒々しいベースラインが躍動感を生み出してる “Pimp Jackson Is Talkin Now!!!” など、どの曲も一つのスタイルにとらわれず、それでいて高い完成度を有していて、そこは Loco Dice の高いセンスと技術力が伺える。しかしここに収められた9曲から、 Loco Dice らしさみたいなものが感じられるかというと、残念ながら私にはそれが分からなくて、どうもイマイチこの作品にはのめり込めずにいる。
まぁそれでも器用貧乏的な退屈さに陥っていないのは大したものだし、傑作だというのに異論はないので、 Loco Dice のことがもっと分かった時点で、また聴き返してみたいと思います。
あと蛇足ながら、私が買ったのは4枚組みのアナログで、つまりはほぼ片面1曲という構成なんだけど、だったらロング・エディットとかにしてくれれば良かったのに、と思うのは私だけでしょうか。そうすれば DJ の方々も使い勝手良かっただろうし、コレクター的な特別感も上がったのに。まぁこのご時世に、70分もしないアルバムを4枚組みで出そうという姿勢は好きですが。