ついでなんで Perc Trax を主催する Perc こと Alistair Wells さんが2011年に出したファースト・アルバム。
Perc って Berghain 以降のハード・ミニマル再燃の動きの中で浮上してきた人、という印象だったんですが、 Discogs 見ると活動歴10年になるベテランさんみたいですね。
ざらついた音質の女性の語りと不穏なアンビエンスで始まる “Choice” 、そしてその流れを一気に断ち切るかのような金属的なリズムが鳴る “My Head Is Slowly Exploding” という冒頭の構成は、いかにもインダストリアル・テクノといった赴きながら、比較的空間を塗りつぶすような太い音が多かった過去のそれに比べると、この作品はより隙間のある鋭角的な音作りがなされていて、それゆえノイズ的側面の目立つ実験的な印象を受ける。
それは揺らめくようなノイズが曲を導くドローンの “Pre-Steel” 、ミニマル・ダブとドローンを掛け合わせたような “Snow Chain” に顕著なのだけれど、かといってダンス的側面が置き去りにされている訳ではもちろんない。例えばくぐもったキックと歪んだドラムが曲を加速させる “Start Chopping” のようなフロアでの盛り上がりを容易に想像できるような曲もあれば、淡々としたキックの上で鳴る鐘を思わせる音が緊張感を高めていく “Gonkle” のように、地味ながらも機能性の高い曲もあり、つまりは両方の側面を備えながらも構成の考えられた、アルバムとして完成度の高いものになっている。
そして中でも圧巻なのが最終曲の “Jmurph” で、左右に振れる金属的なノイズがオーケストラのような躍動感を生み出していて、きんとアルバムの要素を汲みながらも、最後にちゃぶ台返しされたような痛快さがある見事な曲。
ただの過去の焼き直しにとどまらない、インダストリアル・テクノの進化を感じさせる傑作。
ちなみに今作は Fabric みたいなブリキ缶入り。