テクノっていうのは元々匿名性の高い音楽だから、作品はよく聴くけど名前しか知らない、みたいな人がわりといたりします。でもそういった人でも、大抵名前が浸透するにしたがって色々な情報が出てくるものだし、逆にリリース自体が止まってしまう、っていうことが多いように思います。
そんな中 Pom Pom は2001年から約10年間、ほとんど素性を知られる事なくリリースを重ねた稀有なアーティストの一人ではないかと思うんだけど、そんな Pom Pom さんが2008年にだした、今のところ唯一の CD 作品。
今作に収められた曲は新曲ではなく、これ以前に発表されたアナログに収録されていたものらしいのだが、クレジットなどは一切ないので確認のしようがなく、またジャケットから CD まで全てが真っ黒という徹底ぶり。
そして音の方も当然のようにアンダーグラウンド色の濃いもので、低音蠢く1曲目にはじまり、それ以降も歪んだ低音と荒い音像による個性的なトラックがずらりと並んでいる。しかしそれらはただ実験的なだけではなく、テクノの根源的なグルーヴをしっかりと保持したものだし、独特の音の位相のミニマル・ダブの13曲目の次に、スカスカのリズムの上で、今作で唯一といっていいほど透明感のあるシンセが鳴る14曲目で閉めるという流れも、不思議な味わいがあり面白い。
この人はこれ以降、アナログを2枚出したきり名前を見なくなってしまったけど、もうリリースはないのだろうか。